2017年04月19日

『おとぎの森の幼女姫』――キャラメる語り 第五回 魔女イーニス・モゥ――

『キャラメる語り 第五回 魔女イーニス・モゥ』

 女の子の涙には意味がある。それが何色だとしても。

 褐色の肌に銀色の髪、魅惑的な曲線を描く豊満な肢体。異国で生まれ、異国の響きの名を持つ魔女イーニス・モゥは、悪役ながら読者さんから人気があります。さんご色の唇で艶然とほほえみ、おっさん騎士と紳士なドラゴンを翻弄する悪女。言うなれば不○子ちゃんポジション。実は彼女は編集さんからの提案で出番が増えました。増やしてよかったと思います。

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 幼女づくしで物理的に平坦だった場面が、ぐっと盛り上がりました。華が出た。のみならず魔女が何故そう考えて、そのように動いたのか思考の流れをよりはっきりと書き出すことができた。陰を濃く入れることで、明るい部分が際立った。

 彼女は報酬をもらって仕事を請け負うプロフェッショナルの『悪人』です。
 公女とはまた別の意味で謎めいている。騎士と敵対するのは、野望卿に雇われているから。割り切った関係で、求められた仕事をこなし自分の仕事の報酬はきっちり要求する。頭が切れて、思考の切り替えが早い。ヴィランという呼び名がよく似合う。闇の力を駆使する魔女ですが、善悪の概念は知っています。ただそれよりも自分の利益と意志を優先しているだけ。

『かわいそうな子なんだから許してあげて?』そんな論法は、ふんっと優雅に鼻先で笑い飛ばす強気なお姉さん。

 何故かギデオンに興味を持ち、自らの魅力をあますことなく駆使してぐいぐい迫ります。だけどおじさんは姫優先。「やー、おじさん今いそがしいから」「あと十年若ければ」終始こんな感じで素っ気ないのですが、後半に行くにつれてほんのすこーしずつ、軟化しています。細かい所まで読まないと、気づかないくらいのゆれ幅で。

 時にあどけなく、時にあだっぽく。おじさん騎士に迫る彼女は果たして見かけ通りの年齢なのか。そもそも何者なのか? どちらも決まっています。物語を読み進める中で明らかになります。

 外見と性格は一発でさくっと決まった。衣装は「体にぴったりはりついて、半ば透けたクモの巣状の黒いドレス」。これが今野先生のイラストではさらにセクシー度がアップ! 大胆に肩や胸元、背中がぐりっと開いていて、美しいボディラインが映えること映えること。しかも襟元やすそのなびき方がいかにも「悪い魔女!」といった空気をかもしだしていて、感嘆のため息がこぼれました。特に口絵の振り返る立ち姿が素晴らしい。

 そんな色っぽい魔女さんが駆使するのは、巨大なクモの使い魔。挿絵にも登場していますが、これが実に迫力がある。
『明らかにこの巨大なクモは友好的ではない。さあ、武器を構えて次のページに進みたまえ!』そんなゲームブック風の文章が浮かんでくる。ダイスを握りしめたくなる。怪物が自分に迫ってくる臨場感と圧力を感じました。こわい、そしてやばい。かっこいい。

 魔女自身もクモの糸を操ります。自由自在に、それこそアメコミのヒーローのように。この銀色のクモの糸は変化自在でいくつもの用途に使われます。人を縛ることもできる、自分自身を支えることもできる。何かを編むこともできる……形のあるものからないものまで。

 魔力の糸(スレッド)を「編んで」「投てきする」という概念はTRPGアースドーン(これも日本語版は絶版)からも影響を受けています。そしてクモの糸には、想像力をかきたてる魔力があります。この応用力の高さは、フィリス・アイゼンシュタインの小説「妖魔の騎士」に登場する織姫デリヴェヴに由来します。(これも絶版……名作なのに)ただし、こちらに登場する使い魔のクモは小さい。そしていっぱいいる。

(第五回/了)

第四回(ミーガン公女)はこちらから

第三回(野望卿ジークフリート)はこちらから

第二回(スパイク・スケイル)はこちらから

第一回(ララ・リリア姫)はこちらから

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posted by 白好出版 at 18:00| おとぎの森の幼女姫